座談会〜地域活性化に向けた自治体等関係機関との連携強化〜
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総務省においては筆頭副大臣として、地方自治、地方税財政、消防などを担当し、内閣府の方では、道州制、地方分権改革、地域活性化、国家戦略特区を主に担当するなど、国民生活に関係の深い多岐に亘る分野を務めている。
生まれは埼玉県の秩父郡皆野町、商工会地域の出身。
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関口 昌一 総務副大臣
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秩父音頭のふるさと、埼玉県皆野町商工会の会長。
皆野町は、観光地として有名な秩父、長瀞に挟まれた山あいの町、人口約1万人だが、他の多くの商工会と同じく、人口の減少と高齢化が大きな課題となっている。
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吉岡 澄幸 埼玉県皆野町商工会会長
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工場のない街、神奈川県の葉山町商工会会長。
葉山町は大きな製造業がなく、住民のほとんどが、電車で30 分の横浜や、1時間の東京に働きに出てしまうベッドタウン。人口3万人前後。「“湘南”とは呼ばれたくない、“葉山は葉山”」とたいへん地元愛が強い。
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新一郎 神奈川県葉山町商工会会長
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■地方、とくに商工会地域の町村部は、急速な人口減少が進むとの推計がありますが、地域経済の現状と将来について、副大臣よりご紹介をお願いします。
関口 現在の地方経済は、ご存じのとおり、人口減少、少子高齢化などの影響により大変厳しい状況にあります。
また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、昭和52年と平成22年を比較すると、7割の自治体で人口が20%以上減少し、5割の自治体で生産年齢(15〜64歳)人口が40%以上減少するとの予測が出ております。このため、地域活性化への対応は待ったなしであり、後にご紹介しますが、すでに様々な取り組みに着手しています。
また、都市部でも急速な高齢化が予想され、介護福祉の担い手不足といった課題が指摘されています。
【商工会の地域活性化への取り組み】
■今、副大臣から、地方の厳しい状況についてお話がありましたが、吉岡会長の皆野町ではどんな取り組みをされてきたのでしょうか。
吉岡 皆野町も、大手企業の撤退や地場産業の疲弊により、厳しい状況にあります。
かつて日本のシリコンバレーと呼ばれたこともある秩父地域ですが、今は影をひそめた状況です。働ける場所がなくなり、地元を離れる若年層が増え、昭和40年代後半に は、1万3,000人を超えた人口も現在では1万500人程度まで減少しました。
活性化への取り組みでは、特産品の柿を使った事業を行ってきました。
皆野では、昔から栄養価の高い柿の栽培が盛んでした。しかし、年々若い人が柿を食べなくなったり、農家の高齢化が進んだりしたことで、柿の木が放置されていました。商工会が中心となって、ボランティアを募り、放置された柿の木を貰い受け、平成16年から柿酢づくりに着手しました。「全国展開支援事業」の補助金をきっかけに、「柿のわ事業」と名付け、柿を使った様々な特産品による地域振興策に取り組み、NHKテレビにも取り上げられ話題となりました。
とくに柿の消臭効果に着目した「カキシブ男の石鹸」を開発したところ、この柿渋石鹸が「全国むらおこし特産品コンテスト」で、中小企業庁長官賞を受賞。開発参加者のモチベーションが上がり、特産品を活用した取り組みにも弾みがつき、結果として雇用の拡大にもつながりました。
■蜑長の葉山町は、東京、横浜といった大都市に近接した地域ですが、どんな取り組みをされてきたのでしょうか。
葉山では、地域の取り組みにあたって、会員事業者が儲からない地域振興策はやらない、イベントを1日やって、「今日はたくさんの人にきてもらった。よかったバンザーイ」はやめようと考えていました。
そこで、平成2年に商工会、農協、漁協が中心となって始めたのが、毎週日曜日に葉山マリーナの近くで開く「朝市」。地の野菜や獲れたての魚介、葉山の有名店の洋食、ケーキ、パン、オリーブオイルなどを出品、他県からも多くのファンを集める今も人気のイベントになっています。
そして今取り組んでいるのが、毎日開く“市”としての「共同店舗」づくりです。葉山の魅力を感じてもらう“市”のような店づくりを目指しています。葉山ブランド商品の販売や海の幸・山の幸など地場産品の直売、これらの地場の食材をふんだんに使った飲食で、葉山の魅力を発信するため、平成28年3月オープンを目指して、頑張っているところです。出店参加資格は商工会員で、予想を上回る出店希望があり、うれしい悲鳴をあげています。
すでに葉山町の都市計画マスタープランではこの地区を「地域交流拠点」と位置づけており、地域の魅力を高めていくための拠点にふさわしい、土地利用への誘導をめざすとともに、この事業の実行委員会のメンバーとして自治体に参加してもらうなど、自治体との連携を図りながら進めています。
【地域経済活性化に向けた国(総務省)の取り組み】
■総務省では、厳しい地域経済を活性化させるために、どんな取り組みを進めているのでしょうか。
関口 総務省では、新藤総務大臣の提唱で、平成25年に「地域の元気創造本部」を省内に立ち上げました。安倍総理の「地域の再生なくして、日本の再生なし」の基本方針のもと、この本部を中心に、「地域の元気創造プラン」を策定して、地域の元気を呼び起こす取り組みを進めています。特に、「産学金官」の連携による取り組みを提唱し、従来の地域活性化の支援スキームに地域金融機関を組み入れた地域経済循環創造事業を立ち上げ、地域の雇用を生み出すよう取り組んでいるところです。
具体的には、このプランに基づき、55.4億円の「地域経済循環創造事業交付金」により、地域経済活性化の先行モデルを160事業スタートさせました。
これは、地域金融機関から融資を受けて事業化に取り組む民間事業者に対し、初期投資費用の一部を、総務省が自治体を通して交付金として支援するものです。
この結果、地域の金融機関から約54億円の融資が誘発され、順調なスタートを切れたのではないかと考えています。今後はこの交付金を活用して各地域で事業を立ち上げ、地域の雇用拡大につなげるなど経済波及効果が広がっていくことを期待しています。商工会地域の事業者の方も是非活用していただきたいと思っております。
葉山町商工会では、融資は日本政策金融公庫へ斡旋をさせていただいています。信用金庫等など地元の金融機関との連携も、地域の事業者にとってとても大切です。とくに実績に乏しい企業や創業間もない事業者などに対しては、信用金庫と業務提携し、商工会の経営指導を前提として、前向きに融資を促しています。
地元の金融機関から融資を受けて事業化に取り組もうとしている企業にとっては、副大臣のお話にあった国の裏付けのある支援メニューが準備されていることはとても心強い限りです。
関口 これまでは、「産学官」の取り組みはあったのですが、この「地域の元気創造プラン」の最大の特色は、「産学金官」と、地域金融機関を組み入れたことです。
今後、うまく事業展開ができれば、金融機関も一層積極的に融資に応じてくれるものと期待しており、総務省としても積極的に推進していきたいと考えています。
さらに、今回の取り組みを土台にして、今後こうしたモデル事例を1万事業程度立ち上げる「ローカル10,000プロジェクト」。そして、このうちの100事業を世界市場を目指す「グローバル100プロジェクト」に育てていく構想を持っています。
こうしたプロジェクトが動くことにより、地域に事業が起こり、地域経済が活性化し、日本の再生につながっていくものと考えており、今後ともしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
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左から 葉山町商工会会長、関口 総務副大臣、吉岡 皆野町商工会会長
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【商工会と自治体が連携した地域活性化のこれからを考える】
■地域経済活性化に向けては、自治体だけ、事業者・商工会だけで実施するのではなく、自治体と商工会の連携が重要と考えられます。吉岡会長、蜑長の商工会では、どのように自治体と連携を図っていますか。
吉岡 中小・小規模企業が僅かな資金を持ち寄って、新たなビジネスを立ち上げるのは、疲弊している地域経済の下では、非常に厳しいのが現状です。その意味で今回の「地域経済循環創造事業交付金」のような資金支援事業はありがたいので、是非活用していきたいと思います。
地方都市においては、地域経済活性化に向け何を始めるにも予算が不足しています。国の財政状況もありますが、是非とも予算拡充のお願いをしたい。
商工会には“日本一”ともいえる組織とネットワークがあり、きめ細やかな地域や企業への支援活動が可能です。自治体の予算をもとに、連携して地域経済活性化に取り組んでいきたいと思います。一つには、直接地域経済活性化につながるものではありませんが、高齢者対策として、「独居老人用生存確認システム」の運用での連携などが考えられます。
「資源は有限、創意は無限」ですので、商工会では「創意」を生かして地域の活性化につなげていきたいと考えています。 蛛@葉山町商工会では、「朝市」をきっかけとして、自治体や農協、漁協とのネットワークをつくってきました。こうした連携を生かし、今「野菜(サイ)クル」といった、あらたな地域振興事業に取り組んでいます。
「野菜(サイ)クル」というのは、まちの産業ゴミ削減、資源の有効活用、子供たちに本物の野菜の美味しさを伝える「食育」をねらいとして、商工会が中心となって始めました。
飲食店から出た食物残渣を有機肥料にして農家に納める。農家ではそれを活用し、農薬を極力抑えた低農薬の安心な野菜を栽培。その新鮮野菜を「朝市」で販売し、地元の飲食店や住民が購入。レストランではそのフレッシュな野菜を使った美味しい料理を提供するという、資源循環型のシステムのことです。スタートして今年で3年目ですが、収支の合う事業ベースに乗ってきたらゴーサインを出したいと思います。
現在自治体には、試行期間中なので事務局として参加してもらっています。事業成果があがる段階になったら、予算も絡んでくるので積極的に関与してもらえるよう、常に連携しあって事業を進めています。
【小規模企業振興基本法の成立を受けて】
■地域経済活性化のパートナーとして、今後、商工会にはどんなことを期待されるでしょうか。
関口 商工会は、これまでも地域に密着し、幅広い人脈や地元の機関との厚い信頼関係を構築しながら、地域経済の活性化に取り組んでいただいています。総務省としても、「地域経済循環創造事業交付金」といった取り組みも動き出しておりますので、各自治体と商工会がより一層緊密な連携をとっていくことを望んでいます。
そして、この度小規模企業振興基本法が成立しました。小規模企業の振興にとって大切なことですが、地域活性化を図るうえでも大きな意味があると考えています。
また、小規模企業の振興と地域の活性化とは、極めて密接な関係にあるので、地域を元気にするには、地域の小規模企業の方々がしっかりと事業を行っていくことが何よりも必要です。
この小規模企業振興基本法によって、都道府県、市町村も小規模企業の振興施策の策定・実施の責務を負うこととなりました。
総務省としても、小規模企業振興基本法の趣旨を各地方自治体にしっかり伝え、小規模企業や地域が元気になるよう一層努めていく考えです。